肝臓は悪くなってもあまり痛くならないから、自分で気づいたときにはかなりいたんでしまっている場合が多くなります。1度ダメージを受けると回復できない臓器もありますが、肝臓はダメージを受けると非常に大だれきな自己再生力を示します。だから誰しもその再生力に頼ることになり、ダメージを与えつづけて回復しにくい状態にしてしまうのです。
では、何が肝臓にダメージを与えるのかというとひとつめが脂肪の過剰摂取です。ふたつめはアルコールの飲みすぎ。3つめは不適切な栄養摂取です。
なにしろ肝臓のような重要な臓器にダメージを与えるのだから、ひとつめと3つ目が結びついた食事は最も悪い食事といえるでしょう。逆に、脂肪をとりすぎずに適切な栄養の摂取ができる食事は、肝臓を健康に保ってくれるわけで、むろんこれはよい食事です。先般、食糧と食事に関する外国取材のテレビを見ていたら、おもしろい場面に出会いました。スウェーデンの高校の授業で、先生が生徒に1枚の写真を見せて感想を述べさせていました。写真にはレストランで楽しそうに食事をしている人たちが写っていたが、生徒たちの反応が意外だったのです。何と答えたかというと、脂肪のとりすぎになるというのが大半でした。
栄養学の知識をもっている生徒たちは、レストランの雰囲気に惑わされることなく(グルメ・ブームのわが国とはずいぶん違う)、はっきりそこに悪い食事の典型を見ていたのです。具体的にいうと、バターやクリームをたっぶり使った肉料理や、油で妙めたり揚げたりした肉料理です。肉自体に脂肪があるうえに乳脂肪や植物油が加わるのだから、脂肪のとりすぎにならないほうがおかしいのです。もしも、こういう食事を毎日つづけている人がいるとしたら大変な負担が肝臓にかかっていくはずです\r\nそれでは、どうやったらよい食事にできるのでしょう。鍵となるのは豆類です。。豆類を穀類の3分の1くらいとるという食事の基本の組み立てができたら、脂肪をとりすぎる心配はなくなります。その比率で豆類と穀類を食べ合わせると、それぞれの必須アミノ酸組成の欠陥が補われて完全に近い蛋白質になります。それで基本的な蛋白質がとれるために肉のような高蛋白食品に対する欲求が減ってきます。
肉には、分離できないかたちで脂肪が入っているから、これを主要な蛋白源にしていると、どうしても脂肪のとりすぎになります。目標は植物性蛋白と動物性蛋白を5:5でとることで、豆類を穀類の3分の1くらいとるようにすると、自然にそのパターンになっていくのです。そして、豆食が定着すると五5:5ではなくて植物性蛋白のほうが多くなっていきます。植物性蛋白主体の食事に変わっていくのです。また、そのパターンになると食物繊維も増えるし、その他の栄養素も適切に摂取されることになる。食事というのは、基本の組み立てを誤らなければ、そのようにうまくまとまっていくものです。