血圧が高い人の性生活について

性行為による血圧の変化

高血圧の人が不慮に血圧を揺さぶることは最も危険なことだということは周知しています。そして血圧の揺さぶりは、性行為のときに大きいという推測から、高血圧の人はもちろん、かつて脳卒中や心筋梗塞をおこした人も、性行為を危険視しているようです。ところで、実際の性行為で血圧がどのくらい変動するかという点について、日本ではくわしい調査がなされていませんが、外国にはこういった研究がいくつもあります。

実際には、刻々と変動している血圧を、その最中に連続測定することは困難なことです。ただし脈拍数の変動となると、心電図を連続記録してさえいれば、あとで脈拍数が計算ができるので、これに関する調査は多いのです。

たとえば、安静時には66だった脈拍数が、性的興奮とともにしだいに増加し、挿入時には94、オルガスムでは117に達します。そしてオルガスム後、2分経過すると、68に落ち着くことが示されています。これは1人の例であって、一般論としてはどうかというと、24~40歳の男性について、夫婦間の調査がなされています。

その結果は、オルガスム時の最大血圧値と脈拍数は、安静時に比べ、かなり増加するようです。つまり、安静時に66ぐらいだった脈拍数は、オルガスムのとき120にもふえますが、瞬間的には185にも達することがわかっています。
血圧については、安静時に122/68mmHGであったのが、ピーク時には162/80mmHGに達します。そして最大血圧の上昇は激しいのに、最小血圧は思ったほど上がりません。しかし、結婚生活25年という50歳代の男性についての別の調査では、オルガスム時の瞬間脈拍数はせいぜい120止まりということですから、長年、苦楽を共にした夫婦間では、性行為時の血圧上昇も、そんなに大きいものではなかろうと考えられています。

ただこれらの調査は、血圧が高くない健康人についてなされたものです。高血圧の人は正常血圧の人よりも、運動負荷や精神的ストレスでの血圧上昇度が大きいということですから、その点を考慮に入れてください。さてここで、腹上死という言葉があります。

同じ性生活でも、体位が上か下かで、この血圧や脈拍の変動が違うかどうかという点について、調査では、大きな違いはないという結果が出ています。しかし脈拍数は上位をとったときのほうが多いということから、からだを支えるだけ余分な負担がかかるという意味で、上位を避けるようアドバイスする医師もあるようです。

夫婦間であれば心配いらない

いずれにせよ、高血圧であっても、脳や心臓の動脈に合併症をもっていない場合は、夫婦の間柄ならたいした心配は無用ということです。たとえ脳や心臓の事故をいったんおこした人でも、この程度の血圧変動は、日常生活のほかの動作でもおこり得るわけですから、なにも性生活だけをこわがる必要はないのです。ただし、ハッスルのしすぎは避けましょう。

性行為による死亡事故

性行為で死亡する原因は、心臓にある場合もあれば、脳にある場合もあります。東京都の調査では、心臓死20名のうち、心臓に病気をもつていた者は65%ということで、その他は解剖しても心心臓自体にこれといった病気が見つかっていません。おそらく、心室細動とか心停止とかの重篤な不整脈が死を招いたものと思われます。

脳死14例のうち50%はくも膜下出血で、残りは脳出血です。脳梗塞が見当たらない理由は、この病気は発病しても必ずしも致命傷とはかぎらず、また死亡したとしても、発病してから死亡するまでに1両日以上かかるので、調査の対象からはずれているためと考えられます。

事故の原因

死亡事故をおこした場所と相手をみると、ほとんどが旅館であったり、また相手が愛人やホステスだったりしています。このことから、事故の原因が、夫婦間では経験しようのない強烈な興奮にかかわりがあると判断されます。

また、調査した34例のうち12例が酒を飲んでいたことから、性行為前の飲酒が死を招く要因の1つだと考えられています。団体旅行者が温泉のなかで死亡する事故がしばしばありますが、これも飲酒後の入浴が関係しているようです。
ただひと口に飲酒といっても、自分の家での晩酌であれば、おふろに入ろうが、何をしようが、事故はそう簡単におこりません。つまり同じ飲酒でも、家庭の外では、思わず自己の許容量をこしてしまうところに問題があるようです。

ここで関係し合った男女の年齢をみると、事故をおこした男性が相手とした女性の年齢はかなり年下です。こんなところにも、男性が強烈な興奮を覚をいつになく無理をしているのではないでしょうか。

そこで脳卒中や心筋梗塞のきっかけについて、原点に戻って考えてみると、これらの発病はなにも性行為中にかぎった話ではないのです。

むしろ性行為以外のほうが多いのです。会議中、披露宴のテーブルスピーチ、出勤途上、葬式への参列、ジョギング中、などなど、すべてが、肉体的・精神的ストレスをおこしたときであり、しかも、体調が乱れているときに、いっそうのストレスが加わった場合に多いようです。この点に関しては、おふろやトイレで脳や心臓の事故がおこるのは日本だけである、つまり、入浴や排泄そのものが悪いのではなくて、血圧を揺さぶるような入浴法や排泄法に問題があるのだということは何回も述べたとおりです。性行為にしても同じです。これで事故がおこったからといって、それはいつになく無理をするところに問題があるのです。

人間は誰にも、趣味、煩悩、道楽がつきものです。それぞれが本来は自分のストレス解消には百薬の長であるはずなのにとらわれすぎると毒にもなるわけです。

血圧や脈拍を揺さぶる原因はほかにもいろいろあるのです。なにも性生活だけが悪いのではないのです。

そして働き盛りの人に多い肥満は血圧を下げるためにとても重要です。

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